研究

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世界的希少種ノジコの生息場所選択

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里山の環境と鳥類の多様性

ノジコEmberiza sulphurataはホオジロ科に属するスズメ程の大きさの渡り鳥です。国際自然保護連合のレッドリストでは絶滅危惧II類、環境省のレッドリストでは純絶滅危惧種に選定されています。越冬地のフィリピンから4月頃に渡ってきて、日本で繁殖を行います。しかしノジコの繁殖地は世界中で本州の北部に限られ、しかもその分布は局地的です。
 フィリピンから日本まで渡ってくるほどの飛翔能力があるにもかかわらず、なぜそのような繁殖分布を示すのか?繁殖地として好む環境によほどのこだわりがあるのだろうと、新潟県の繁殖地でノジコの個体数と環境との関係性について調べました。その結果、新潟県の繁殖地では、林縁の長さや地すべり面積がノジコの生息個体数にプラスに働いていることが明らかになりました。いずれの環境も巣をつくるのに適したやぶの発達とさえずり場所として最適な高木がセットになっていることが要因と考えられました(Deguchi et al. 2017 Bird Conserv. Int.)。現在は、対象を全国に広げて研究を進めています。
 また、過去には近縁種のアオジE. spodocephalaについても、最近になって定着した新潟市海岸林の繁殖地で、低木の発達した環境を好むことを明らかにしました(出口ら2015 山階鳥学雑誌)。

里山には人間の営みにより水田や草地、山林など様々な環境がモザイク状に存在し、結果として豊かな生物多様性を創出、維持してきました。しかし、現在では人口減少、少子高齢化により労働力が不足し、多くの水田や薪炭林などの環境が「荒れた状態」となっています。
 これらの環境の変化は、里山の生物多様性にも影響を及ぼすと考えられます。そこで私は環境をより豊かなものにしている里山の水域に着目。そもそも、どのような水域が里山の生物多様性に貢献しているのかを明らかにするため、新潟県に中山間地において水田、ため池、養鯉池の3タイプの水域の鳥類多様性(種数、個体数、種組成)を比較しました。その結果、3タイプの水域間で、種組成は類似していたものの、一年を通して池、特にため池は水田よりも種数が多く、開放性や森林性の種類では一部の季節で個体数が多いことも明らかになりました。このことは、ため池が鳥類の生息地として重要で、保全の優先度も高いことを示唆しています(Deguchi et al. 2020 Biodiv. Conserv.)。
 また先述の研究からは、水田の耕作放棄による水田の草地化・やぶ化は、やぶを好むノジコにとって補足的な生息環境としてしか機能していないことも明らかにしました(Deguchi et al. 2017 Bird Conserv. Int.)。現在は、水田の耕作放棄、モウソウチク林の拡大が鳥類の多様性に与える影響を研究しています。

ガビチョウ_多摩市桜ヶ丘公園_190128 4_edited.jpg

北陸地方の自然史

北陸地方(新潟県、富山県、石川県、福井県)は本州中部の日本海側に位置し、その環境や動物相は冬季の多雪によって特徴づけられます。
​ これまでに特定外来種ガビチョウGarrulax canorusの北陸進出に関する記録(出口ら2016 Strix)や北陸各県の哺乳類相の比較、福井における鳥類相の調査・記録を行ってきました(出口2017,2018,2019)。現在もこれら北陸の自然史情報の集積に努めています。

研究業績

論文(査読付き*)

  1.  久野真純・出口翔大(2021)河北潟干拓地とその周辺における鳥類多様性の農地タイプ間での比較.河北潟総合研究, 24:1-8. 本文

  2. Deguchi S, Katayama N, Tomioka Y, Miguchi H. (2020) Ponds support higher bird diversity than rice paddies in a hilly agricultural area in Japan. Biodiversity and Conservation.​ DOI : 10.1007/s10531-020-02023-4 要約

  3. Hisano, M., Newman, C., Deguchi, S., & Kaneko, Y. (2018) Thermal forest zone explains regional variations in the diet composition of the Japanese marten (Martes melamous). Mammalian Biology. https://doi.org/10.1016/j.mambio.2018.06.001

  4. Hisano, M. & Deguchi, S. (2017) Reviewing frugivory characteristics of the Japanese marten (Martes melampus). Zool. Ecol. 1-11. https://doi.org/10.1080/21658005.2017.1412017.

  5. 浅野涼太・小橋皐平・小川和也・出口翔大(2017)ブッポウソウの巣箱からはじめて発見されたコブナシコブスジコガネ. 昆蟲ニューシリーズ, 20: 183-185. 本文

  6. Deguchi, S., Ishihara, Y., & Miguchi, H. (2017). Habitat preferences of breeding Yellow Buntings Emberiza sulphurata in hilly rural areas following rice field abandonment in northern Japan. Bird Conservation International, 27, 550-559. 要約

  7. 浅野涼太・小川龍司・佐藤悠子・出口翔大(2016)フクロウの巣箱からはじめて発見されたチビコブスジコガネ. 昆蟲ニューシリーズ, 19: 94-96. 本文

  8. 出口翔大・小川龍司・伊藤泰夫・組頭五十夫・中村勇輝・石原通裕(2016)北陸地方沿岸部におけるガビチョウGarrulax canorusの記録. Strix, 32: 179-187.

  9. 出口翔大・千葉 晃・中田 誠(2015)海岸クロマツ林における繁殖期のアオジの植生構造に関連した生息場所選択.山階鳥類学雑誌, 46: 101-107. 本文

​ * 査読とは学術誌に投稿された研究論文に対して、その分野の編集者や専門家が内容の適切さや妥当性などを評価し、掲載の可否を査定することです。


​論文(査読なし)

  1. 出口翔大(2021)福井県部子山におけるブナ林の鳥類群集. 福井市自然史博物館研究報告68: 37-48 本文

  2. 出口翔大(2020)市街地に囲まれた孤立丘陵(福井市足羽山)におけるオオルリCyanoptila cyanomelanaの巣立ち雛の記録. 福井市自然史博物館研究報告67: 53-56 本文

  3. 出口翔大・ 大西敏一(2020)福井県におけるニシオジロビタキ Ficedula parva の記録. Ciconia(福井県自然保護センター研究報告)24: 15-19. 本文

  4. 出口翔大・八木正邦・梅村信哉(2020)福井県池田町の部子山で拾得されたヒメヒミズ Urotrichus talpoidesCiconia(福井県自然保護センター研究報告)24: 21-23. 本文

  5. 出口翔大(2019c)福井市深谷町におけるノジコEmberiza sulpurataを対象とした秋季の鳥類標識調査.福井市自然史博物館研究報告66: 45-48. 本文

  6. 出口翔大(2019b)福井市足羽山におけるミゾゴイGorsachius goisagiの初記録.福井市自然史博物館研究報告66: 49-50. 本文

  7. 出口翔大(2019a)北陸3県における陸棲哺乳類相の比較.福井市自然史博物館研究報告66: 51-56. 本文

  8. 出口翔大(2018b)足羽三山におけるニホンテンMartes melampusの初記録.福井市自然史博物館研究報告65: 75-78. 本文

  9. 出口翔大(2018a)足羽三山における鳥類群集の季節変化(2018年).福井市自然史博物館研究報告65: 47-56. 本文

  10. 出口翔大(2017)ヒクイナPorzana fuscaの福井市南西部における生息調査および福井県内の過去の生息記録.福井市自然史博物館研究報告64: 49-54. 本文

  11. 出口翔大(2012)福井県におけるギンムクドリのSturnus sericeusの初観察記録. Ciconia(福井県自然保護センター研究報告)17: 23-24. 本文

獲得研究費

・公益財団法人こしじ水と緑の会第13回自然保護助成基金 助成額 480,000円
・公益財団法人こしじ水と緑の会第15回自然保護助成基金 助成額 500,000円(満額)
・日本学術振興会平成30年度科学研究費助成事業(奨励研究)
 「モウソウチク林は悪者か?―動物の生息環境としての評価―」助成額 500,000円
・NPO法人バードリサーチ 調査研究支援プロジェクト2019
 「日本生まれのノジコ、フィリピンでの暮らしー越冬地における個体数、生息環境ー

 助成額 150,000円

研究業績

査読経験

Ornithological Science (1本)

日本鳥学会誌(2本)

日本鳥類標識協会誌(1本)